大江作品の登場人物のイメージについて+一言映画評

『静かな生活』という映画を見た。点をつけるなら60点くらいのたいしたことない映画だったけど、山崎努が演じる、登場人物の作家K(パパやKちゃんと呼ばれている)に、なるほど、と思わされた。
Kは明らかに大江健三郎自身がモデルなんだけど、劇中でKが、家の水道の修理を業者を通さず自分でやろうとする場面で、Kは庭に埋まっている水道管に詰まっているものを除去しようと、自作の棒状の修理道具を突っ込んで、ガコガコと汚い音をたてて動かして、泥だらけになりながら奮闘するのだけど、大江健三郎の作品の主人公(あるいは、大江自身をモデルにした登場人物)って、だいたいこんな感じだよなと思った。

へとへとになりながら。汚くて暗いものを、なんとか掃除したり、突破しようとしているイメージ。
自己肯定感が低い、っていう言葉では足りないな。
①自己肯定感が低く、救いようのなさがある
②それでいて、自己肯定感の低さに安住しているところがあり
③しかし、そういう状況を突破したいとも思っている
そういう人物。

万延元年のフットボール」「個人的な体験」「同時代ゲーム」「下降生活者」「叫び声」「人生の親戚」をこれまで読んだんだけど、そういうイメージの人物が必ず出てくる。

そういう人物がいかに、苦労の末に救われたり、妥協して現実を受け入れるかというところが、大江作品の特徴であり、魅力であるような気がするね。

汚くなりながら、そういう生き方をしながら、しかし、何かを掴むことはあるのだということを、大江作品からのメッセージとして、俺は受け取ったなあ。


万延元年のフットボール」なんか、暗いなーと思って読んでいると最後はスカッとするからね。

まさに汚れている管を通り抜けて爽快な風景に出会うような読後感だった。





最近見た映画の感想を短めに書いていきます。

WOOD JOB!〜神去なあなあ日常


70点。

惜しい。尺の問題か、どうも展開にちぐはぐ感がある。

特にラストはあれでいいの?って感じ。主人公と親の関係の描写が足りない。

題材はあまり映画で扱われていないもので、ストーリー自体は面白くて楽しく最後まで視聴でき、林業とそれを守る地域の雰囲気は味わえる。

マキタスポーツという逸材をもっと生かしてくれば・・・



タンポポ

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90点。

見るの3回目。面白い。伊丹十三は芸術的なこともできるのに、あえて大衆目線で作品を作ってきた映画監督だと思う。

芸術性のあるシーンは本気が出ていて素晴らしい。特に海女さんと牡蠣のシーンは何回も繰り返し巻き戻して見てしまう。最初にそのシーンを見たときは興奮してたまらなかった。あれほど見事な演出はなかなかない。

そういうため息がでるほどのシーンもあれば、随所で笑わせられ、スリルを感じさせられる。その緩急の心地よさ。しかも、本編と関係のないシーンが多いのに、物語の筋というか背骨を損なわない。



ジャズ大名

ジャズ大名

ジャズ大名


70点。

まずまず。破天荒な映画だが、頭を使わずにさらりと見れて、楽しい気分になれる。
城をぶち抜いて道路にして、幕府と新政府軍を戦わせるなど、演出が独特で、それだけで楽しめる。
古谷一行演じるお殿様のキャラクターも愛嬌があって見ていて飽きない。
タモリが最後の方で出てきます。
お殿様の妹がいい味出しているんだから、もっとキャラを掘り下げてほしかった。



うる星やつらビューティフルドリーマー

90点。

もう何回見たかわからん。見れば見るほど面白い映画。
何がいいかって、おちゃらけているんだけど、「終わりなき日常」というクソマジメなテーマを観客にぶつけてくるところがいい。
夜、あたるが大量のマネキンを載せたトラックやちんどん屋に遭遇するシーンや、しのぶちゃんが風鈴に囲まれるシーンなど演出も美しい。
そしてあの終わり方。毒があって観客への嫌がらせかとすら思う。

こんな傑作が地上波で流れないのは、やはり、冒頭にでてくる「純喫茶第三帝国」のせいか・・・



LIFE!

65点。

まずまず。もっとLIFE社の社内の様子とかを盛り込んでくれたら面白かった。というか、そうしてくれないと、LIFE誌の廃刊という出来事の重みが伝わらない。
あと、主人公の母親と妹がいらない。主人公が探しているフィルムのありかも、まったく意外性がない。こんなん入れるくらいなら、主人公を世界のあちこちに飛び回らせて、ようやく見つけた写真家からフィルムをもらうっていう展開のほうが、どれほど爽快感があったかわからない。なんで主人公が旅をするシークエンスが、寒い場所のシーン中心なんだよ。見ているこっちも寒くなる。


バットマンビギンズ

バットマン ビギンズ 特別版 [DVD]

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70点。普通。敵がバカばかりでスリルがない。特にショッカーみたいなやつら、バットマンの存在を知っていて、なんでゴッサムシティを壊滅させる計画を実行するより先にバットマンを片付けておかないのか。

ただ俳優の演技は悪くないので、それだけが救い。脇役がみんないい。